東芝の実質株主に関する判決 2023年12月21日
この証券訴訟は、機関投資家も含めた集団訴訟です。東芝が多額の減損損失を計上せず、適時開示をしていなかったことに発する損害賠償請求です。実質株主である機関投資家は請求権無しという判決でした。
機関投資家が株式を保有する際、株主名簿上はカストディアン名義であり、実質株主は機関投資家です。
この判決は実務的に通用するのでしょうか?「カストディアン名義」はファンドの実務では、グローバルで行われていることです。
カストディアンである例えば信託銀行は東芝を買いたくて購入したのでしょうか。信託銀行は、あくまでファンドの売買の指示のもとに資金を動かしているだけです。
株主総会の招集通知を吟味して議案に賛否を熟慮し、賛成や反対を表明しているのは誰でしょうか。実質株主であり、カストディアンではないはずです。
そうすると実質株主である非名義株主である機関投資家は損害賠償請求権を有すると思うのですが。
東芝は上場していた時期は、実質株主が誰なのかを調査をしていたはずです。また、機関投資家が判断して東芝の株主総会の議案を審議していたのを知っていたはずです。東芝の認識していた実質株主からの損害賠償請求なのだから、請求権が機関投資家に帰属すると思えるのですが。
実務では、株主名簿は名義株主、ノミニー名義になっているのですから、上場企業は実質株主を探し出し、実質株主である機関投資家に議案の促進を促してきました。また実質株主である機関投資家に議案の評決のアドバイスをしていたISS等や実質株主判明調査をしていたIR会社や信託銀行のビジネスは何だったのでしょうか。疑問の残る判決だったと思います。